アントレプレナーであること=ビジネスを成功させること
これから書くのは、6月に開催したE会の議事録です。長らくさぼっていて申し訳ありません(5月分のさぼっています。メモは取ってあるので近日中にアップ)
さて、表題に掲げた「アントレプレナーであること」と「ビジネスを成功させること」はイコールで結べないのは当たり前だ。当たり前なんだけど、これらスタンフォードの事例に付き合っていると、ちょっと混同してしまうことがあるのも事実である。
本会がはねた後、一番若いHさんが「僕がこの会でつかみたいのは、アントレプレナーシップというある種の精神論が、必ずしもビジネスの成功に直結しないんではないか?それを色んな事例から証明してみたいんですよ!」こう発言した。
彼は若いのにもかかわらずいつもうがったことを言う。
「同世代(30前後)の経営者と話すと、アントレプレナーへの憧れ・・・例えば孫さんが120%自分を信じて曲げるな!と言ったとか、ある種のステレオタイプな精神論の繰り返しじゃないの?という発言が多いんですよね・・・」とも言った。
そのとおりである。僕も30前後の時、いまよりも若い孫さんに会って、同じことを言われた。そして孫さんに限らず、多くの経営者に会って、色んな話を聞いて(確かに経営の神髄みたいな感じでもあった)感化され、自身のロールモデルとして心のどこかへ置いてきたのも事実だ。
僕たちが若いときに聞いた話をひとつの言葉に集約するとそれは「あきらめるな!」だった。企画を打ち立て考えに考え、自分自身を100%、120%説得し、不退転の心意気であらゆる困難を乗り越えよ。そこを乗り切ったから、いま僕がここにいる。全員がそう言うわけではなかったが、自身の経験をそのように語る傾向が日本にはあるのかもしれない。要はかっこいい話になるわけだ・・・
けど、いま改めて考えてみると、それは心構えのヒントになり得ても、具体的な起業や経営スキルを教えてもらったわけではない。寝る間、遊ぶ間を惜しんで死ぬほど働いた・・・からと言って成功するわけではない。ビジネスにとって適切なタイミングに適切な対応と適切な体制を準備できたものだけが、勝ち残ってきているだけで、そこに普遍的な智恵があるのかどうか?に注目すべきだった。そう最近思うようになってきた。
その点、ホフマンは、確かに語り口が一味違う。
ホフマンは大学では哲学を専攻し、しかも学者を目指しオックスフォードで研究を続けていたらしい。そんな人なのでレトリックも彼一流のもの言いが多い。
まずアントレプレナーを語る前に「自分の時間と才能」を「何にどう投資するか?」というテーマで分類を行うのだが、彼はそれを3つの類型に分けた。
1)インサイダータイプ
2)ポートフォリオタイプ
3)逆説的仮説へ投資するタイプ
インサイダータイプは「自分しか知りえない情報に対し投資すること。投資前から利益確定はほぼ約束されている」・・・ポートフォリオタイプは「リスクを最小化、細分化してポートフォリオを組んで投資すること。MBAや弁護士、コンサル、大企業の運営はこの傾向にある」・・・逆説的仮説へ投資するタイプは「他人には見えていない機会をとらえて、それに飛び込むこと。生還率が低いのにもかかわらず」で、最後のタイプがアントレプレナーだという。
さらにこう表現する「アントレプレナーとは、崖から飛び降りて落ちている最中に、なんとか飛行機を作って生還する。ということを考える連中である」・・・このメタファーは言い得て妙だし、僕が若いときに聞くことができた、多くのアントレプレナーの言葉とも合致する。
「一般の人が誰もできないと思う、もしくは気づかないことに気づいてそれを実行する」行動で、大事なのは市場参入者が他にはいないこと、すなわちビジネスをゼロから立ち上げる時間が確保できる対象に投資をしなければならない。と規定している。この部分が、ちょっと若いときに聞いた話と少し表現がずれてくる。「誰もやっていないことへの挑戦」が自分自身のアイディアやそれに対する思い入れと分離不能な体験としてずっと語られてきたし、ぼくもそう思ってやってきたのだが、この部分をプレイヤー自身が分離して語っているのは新鮮だった。
次に彼はファイナンスの話に移動する。起業にとって大事なのは最初の資金をどうやって得るのか?この大きさで飛行機を組み立てる時間が決まってくる・・・のだけれども、資金調達を得たということはスキューバダイビングで酸素ボンベを手にしただけで、海底から宝物をゲットして地上に戻ってきたわけではない。しかも大きすぎるボンベは浮上の際とても障害になる・・・こんな言い方をするわけだ。
E会ではここまでのくだりは、あまり熱心に議論されなかった。設定した質問が違う主旨だったのもあるが、実際大きなリスクを背負った経験がないと、この部分は鮮明なテーマにはなりにくいのかもしれない。ほんとちょっとしたあやのようなものだからね。
議論になったのは、この次だ。
ホフマンが、起業時に最も大事なこととして語ったのが次の言葉・・・「可能なかぎり早く「早くできない」ことを「できない」と見切ることだ」である。この言葉は少なくとも僕にとっては衝撃的だった・・・諸先輩方からは「あきらめるな!」が大事だと教わった身としては「諦めろ!」と言われた衝撃に加え、自身の強烈な失敗の経験から見ても、まさしく「諦める!」ことが「あきらめない!」こととイコールだと気付いたことにある。
ここはホントにエッセンシャルな気づきで、多くの人と共有したいところなのだが、E会での議論ですら、ここを深く掘るのは難しいことだった。アントレプレナーが多く輩出される例えばシリコンバレーという土地との比較の話になりがちである。もちろん起業を支える文化の違いは大いにあるだろう。でも、この日本にも多くのアントレプレナーはいて、多くの成功事例もある。失敗事例が大きく注目を浴びることは少ないけれど、意外に知られていないのは成功事例の中の無数の失敗についてである。
失敗と言うとちょっとニュアンスが狂うかもしれないから「変更」と呼ぶ方が良いかもしれない。けれども「変更」しなければいけない対象が、自分が信じているもっとも大事なものだったらどうだろう?多くの起業家は「最初のアイディア」を愛してしまう傾向にある。ここでいう変更は「愛するものを諦める」ことである・・・「愛」とか「諦める」とかちょっと精神論?なテイストになってしまったけど、これも日本人の特徴かも知れない(笑)
議事録に戻るが、会の議論では「失敗の大事さ」と「クレイジーさに対する投資」という議論に傾いた。その時出た事例が、前後するが17回の議事録に書いた「空飛ぶ自動車」のモラーだ。この時の話の盛り上がりで、モラーはなぜ資金を集められたのか?なぜ諦めずに今も商品開発に専念しているのか?に対する答えを見つけてみようという話になったのだ。
この時の発言で一番残ったのは、またもやHさんの一言だ。「スケジュール管理じゃないですかねぇ?」・・・
「このアイディアは今年の9月までの3か月間頑張ってみて、最初のマイルストンに辿り着かなかったらやめる!という感覚が足りないんじゃないでしょうか?」・・・そうかもしれない!・・・それでは足りないのかも知れない・・・ので、次回9月5日のE会も引き続きホフマン!

